Q:先日、パート職員から社会保険加入の相談を受けました。当院としてどのような対応をすれば良いでしょうか。

A:

 2016年10月1日から、週30時間以上働く方に加え、従業員501人以上の会社では、週20時間以上働く方などにも厚生年金保険・健康保険(社会保険)の加入対象が広がりました。そして、今年の4月より職員500人以下の会社で働く方にも、労使で合意すれば、保険に加入できるようになっています(社会保険の適用拡大)。短時間労働者の方から、直接事業主の方に社会保険の加入について相談があった場合には、社会保険の適用に向けて、労使の協議が適切に行われるよう、環境整備に努めることが必要です。要件は、以下の通りです。

 

要件①:1週間の所定労働時間20時間以上

 基本的に雇用保険の取り扱いと同様であり、就業規則や雇用契約書等により、所定労働時間が20時間以上である場合が該当します。“所定労働時間”のため、残業時間は計算に含めません。勤務がシフト等の変形労働時間制を組んでいる場合は、1年間を52週とし、下記のように算出します。

 1ヶ月単位    1ヶ月単位の所定労働時間×12÷52  
 1年単位   1年間の所定労働時間÷52 

 

要件②:月額賃金が88,000円以上

 「8.8万円」の算定対象は、基本給及び諸手当で判断し、「①臨時に支払われる賃金、②賞与、③時間外等の割増賃金、④通勤手当及び家族手当」は含めません。また、「月額」で要件を満たすかどうかを判断するため、年収106万円以上(8.8×12ヶ月)はあくまで参考としています。

 

要件③:雇用期間の見込みが1年以上

 雇用期間が1年以上や期間の定めのない従業員は言うまでもなく、施行日前から雇用している場合には2016年10月1日の施行日を起点に、雇用契約が継続して1年以上見込まれれば、要件を満たします。

 雇用期間が1年未満である場合でも、就業規則や雇用契約書等の書面において、契約が更新される旨又は更新される場合がある旨が明示されている場合、又は同じ職場で同様の雇用契約で働いている従業員が更新等により1年以上雇用された実績がある場合には、雇用契約が1年以上見込まれることとして取り扱います。

 

要件④:学生でないこと

 ただし、夜間、通信教育制、定時制の学生は対象となります。

 

要件⑤:労使の合意

 500人以下の会社において、要件を全て満たした方が社会保険に加入するには、下記の方々の2分の1以上の同意が必要になります。

・厚生年金保険の被保険者

・70歳以上の被用者

・①~④の要件を全て満たす短時間労働者

 同意を得たのち、事業主が同意書を添えて、年金事務所に申出をします。健康保険組合に加入している医院は、同組合にも申出が必要になります。

 

医院にとっての社会保険適用のメリット

 短時間労働者を雇用する医院にとっては、保険料の負担が増えるため、デメリットと捉えがちです。しかし、働く方にとって年金や医療の給付が充実することは、安心して就労できる基盤ができることになり、結果として働く方々の健康の保持や労働生産性の増進につながりうるため、メリットと捉えることもできます。

 短時間労働者の社会保険の適用が、医院の魅力を向上させ、より長く働いてくれるような人材確保にも効果的と考えられるため、検討されてはいかがでしょうか。