Q:当院ではハローワークでの求人がメインです。最近、ミスマッチやトラブルが増えていると聞きますが、求人票を出す際の留意点などを教えてください。

A:

 厚生労働省によると「ハローワークにおける求人票の記載内容と実際の労働条件の相違に係る申出等の件数」について、産業別件数では「医療、福祉」の1,514件が最多であり(図表1)、内容別では「賃金に関すること」、「就業時間に関すること」、「職種、仕事の内容に関するすること」が多くなっています(図表2)。他の業種に比べ求人数が多いこともありますが、ただでさえ人が集まりにくい業種であることに加え、このようなミスマッチやトラブルが発生すると、ますます採用が困難になります。

 事業者は求人に関することはもちろん、労働関連法制の遵守には気を配る必要があります。2015年に「若者雇用促進法」が施行され「新卒求人不受理制度」がスタートしました。これは、労働法令の義務違反事業者が是正指導等に応じない場合、その事業所は一定期間、ハローワークに新卒向けの求人票を出すことができなくなる制度です。「新卒は採用しない」というクリニックにおいても基本的な留意点は押さえておく必要があります。

 

1.みなし労働時間制

 いわゆる「みなし残業」・「固定残業代」に関するトラブルは特に増えており、ハローワークも適切な表示を呼びかけています。

 固定残業代制を採用する場合は、次の全てを記載する必要があります。

  ①固定残業代を除いた基本給の額

  ②固定残業代に関する労働時間数と金額等の計算方法

  ③固定残業時間を超える時間外労働、休日労働および深夜労働に対して割増賃金を追加で支払う旨 

 

2.試用期間の延長

 試用期間は「●ヶ月」というかたちで記載しますが、場合によっては本採用前に期間を延長するというケースもあるでしょう。その場合、次の3つの要件を満たしている必要があります。

  ①延長する場合があることについて、就業規則や雇用契約書に定められている

  ②延長理由に合理性がある

  ③延長期間は当初の期間を含め、おおむね1年以内である

 みなし残業・試用期間のいずれに関しても、求人票の書き方はもちろん、事業所内での規程やルールを整備した上で採用活動に臨む必要があります。良い人材を採用するためにも、適切な対応を心がけましょう。