Q:定年後、継続雇用した方の社会保険の手続きを忘れてしまいました。どのように手続きをしたらよいでしょうか。

A:

 再雇用後の1日の所定労働時間及び1カ月の所定労働日数が、同じ事業所で働く職員と比較して3/4以上であれば、再雇用後も引き続き社会保険が適用されます(但し、労災保険はこれらの条件にかかわらず現行どおり適用されます)。

 社会保険は、一度被保険者資格を取得すると、定時決定または随時決定を行わない限り標準報酬月額(*1)の見直しは行われません。しかし、定年又は60歳以上の方を再雇用する場合は、事業所との雇用関係が一旦中断したものとみなしますので、被保険者資格をと喪失し、同日付で再度新たに見直された給与額により被保険者資格を取得しなおす(同日得喪)ことにより 、定時決定や随時決定以外でも標準報酬月額の見直しを行うことができます。

 

同日得喪における留意点

 同日得喪は任意の届け出となっています。

 改定前と改定後で保険料に差がなく同日得喪の手続きを行うメリットがない場合は、必ずしも行う必要はありません。

 健康保険は、疾病手当などの給付金も、再雇用後の標準報酬月額をもとに計算が行われるため、受給することが見込まれ、かつ大幅に標準報酬月額が下がる場合などには確認が必要です。介護保険は、手続き後は給与からではなく、年金から天引きされる仕組み(65歳以上で、年間の支給額が18万円を超える方のみ)に変更されます。厚生年金については、年金を受給しながら給与を受け取っている場合は、「在職老齢年金」(給与額に応じて年金の全額または一部が支給停止される)が適用されます。再雇用後の給与額が、60歳に到達した時点に比べて一定以下に低下している場合に支給される「高年齢雇用継続給付」を受給している場合は、年金額が減額となることがありますので注意してください。

 

手続きと今後の防止策について

 資格取得の手続きが遅れた場合、届け出の際に、雇用継続が分かる書類と賃金台帳や出勤簿等の写しの添付を求められます。これらの書類と退職後の雇用継続が分かる書類の内容が一致しているかや、資格取得届に記載している標準報酬月額に違いがないかなどを、提出する際に確認してください。

 手続きの時効は最長2年で、2年以上を遡った手続きは認められていません。定年退職の際は、継続雇用を希望されない方もいる場合があり、個別の手続きが煩雑になりがちです。漏らさず手続きが進められるよう、それぞれに必要な書類等をチェックできるリスト(図)を作成するなど、日頃から備えておきましょう。

 

*1 会社と社員が折半で負担する健康保険・介護保険・厚生年金保険の社会保険料の計算を簡易にするための仕組み。毎年7月に、4・5・6月に支払われた給与の平均額を、「標準報酬月額表」の等級区分にあてはめて決定する。