開業前はどのような業務をされていましたか?

 開業する直前は仙台赤十字病院の泌尿器科に勤務しており、外来・病棟・検査・治療と全般的に業務を行っていました。泌尿器科は内科外科と分かれていないので、診断から治療までが完結していて、外科的な治療(手術)も内科的な治療(薬物療法や化学療法)も自分たちで行っておりました。
 疾患としては前立腺肥大症に代表される排尿障害が多いですが、感染症、尿路結石、悪性疾患である前立腺がん、膀胱がん、腎がんなど、それ以外には小児先天疾患である停留精巣や膀胱尿管逆流症など様々な疾患を扱っておりました。

勤務医時代の1週間や1日の流れは?

 月・火・木・金曜日の午前中は外来、月・金曜日の午後は検査、火・木曜日の午後は半身麻酔の手術、水曜日は一日全身麻酔の手術の日となっておりました。但し、緊急手術は曜日問わずにありました。泌尿器科は医師が2人しかおらず、本来は週休2日ですが、土日どちらかは出勤となり、結局休みは週1日でした。
 外来のある平日はまず7時40分から病棟カンファレンスが始まり、そのあと回診をして、8時30分から外来診察でした。どの病院も朝は早いのではないでしょうか。外来業務が終了したら昼食を食べ、夕方まで手術や検査が続き、病棟の夕回診で病棟の指示出しが終わると一区切りです。そのあとは翌日の入院患者の準備やカルテの記載などが残務であります。一連の仕事が終わるのが19時くらいでしたが、入院患者の急変や救急外来呼び出しもありました。

勤務医時代にご苦労はありましたか?

 研修医時代は医者としての基本を身に着ける事、当直を沢山こなす事、病院からの呼び出しにきちんと対応する事です。大変でしたが、まだ仕事の怖さがわかっていなかったように思います。研修医として経験を積み、専門医となってさらに色々な事を経験していくことで、苦労の質が変化していきました。こうした苦労を乗り越えて今があるので、勤務医時代の不満は特にありません。

震災の時は石巻で勤務されていたそうですね?

 東日本大震災が起きた時は、石巻赤十字病院に勤務しておりました。当日は家族と連絡が取れず、翌日避難所へ行き、リストで名前を見つけましたが、その時は避難所におらず、町を歩いて探し周り、ようやく合流できました。
 緊急時、家族を置いて患者を診なくてはならない。医師とはそういう職業です。終始、救急対応に追われ大変な状況でしたが、全国の医師に応援に来て頂き、災害拠点病院の役割を果たしました。震災の時は医師の役割について再認識しました。

開業を意識したきっかけは?

 開業そのものを意識したのは若い頃のことで、ある医師の集まりがあった時に「医師は教授を目指すか、開業するかの二択しかない」という話になったんです。確かに定年退職する人は少ないし、そういうものかなと。それ以降は、教授を目指さないなら、いずれは開業を考えないといけないんだなとは思っていました。
 泌尿器科の場合、どこかの病院で部長職以上のポストに付けば異動は少なくなります。それでも、やはり教授が変わると医局人事が発生する可能性もあり、結局は教授にならない限り落ち着きません。それに、病院のポストも限られていること、この地域は民間病院が少なくて泌尿器科がある病院も限られていることも懸念点でした。大学に戻って研究職に就くという選択肢もありますが、それも望んでいませんでした。いずれ開業することになるだろうなと考え、開業する2年半程前から情報収集を始めました。

開業に向けての情報収集はどのように行いましたか?

 本当は誰か親しい人に聞いて回るのが良いのでしょうが、まず同級生で開業している人が少ないです。東北大は50過ぎて開業する人も多いですし、直近に開業した同門の先生も年齢が離れていました。また、科目的に相談できる人も限られてしまいます。そこで、医師の転職サイト経由で、日医リースの個別相談会に参加しました。そこでは、開業のプロセス、前勤務先との連携や泌尿器科の地域分布などを基にしたロケーションの選定方法など、様々な話を聞きました。
 実際に動き出してからは、噂を聞いて既に開業していた知人の先生が声を掛けてくれて、勤務先に開業を宣言した後は教授や同僚の先生も気にかけてくださり、いろんな方に相談にのってもらいました。

最終的に開業を決意したタイミングは?

 現在の開業地を見つけた時です。ここは地下鉄の駅にも近く、計画道路もあり、商業施設や公共施設も近い。いずれ開業しようと考えて市内の候補地を日医リースと10箇所以上見て回っており、ようやくピンときたので、ここで開業しようと決めました。
 開業にあたって重要な要素は、やはり場所だと思います。ここは立地が良く、駅から徒歩10分の距離にあるため、駅から歩いてくる人も多いです。また、駐車場もあるため車で広域から患者さんに来ていただいています。病院のある仙台市は宮城県中央部ですが、県北から来る方までいらっしゃいます。

開業に対するご家族の反応は?

 いざ開業を決めて話をした時、妻はびっくりしていました。反対はしていないという印象でしたが、今思えば、突然の出来事で反対できなかったのかもしれません。妻はそれまで以上に細かいことまで気を遣ってくれており、開業してからはクリニックも手伝ってくれています。本当に感謝しています。勤務していた頃と開業した後で仕事の拘束時間は変わりませんが、妻もクリニックに関わっている分、コミュニケーションの時間は増えました。妻には「本当に大変だ」とたびたび言われますが。

開業前に不安だったことは?

 本当に患者さんが来るかどうか不安でした。
 日医リースと打合せしながら、事業計画を作成して、開業後の収入イメージを付けていき、具体的な集患対策について検討しました。
 開業時の集患対策としてはホームページを作成しました。結果、開業してから患者さんの7割はインターネット経由で来院していただいています。あとは近所や口コミの患者さんです。
 標榜科目は、泌尿器科だけではなく、皮膚科も標榜しました。開業当初は皮膚科の患者さんに多く来院して頂きました。現在はほとんど泌尿器科の患者さんになっております。また、前勤務先との連携を図りました。患者さんを紹介していただいたり、病院に行って手術に立ち会ったりすることもあります。こうした病院との連携体制が図れていることは患者さんとしても安心でしょうし、私としても少し気持ちが楽です。

開業後の苦労は?

 最初の立ち上がりに苦労しました。患者さんが少ないので収入を支出が上回る状態で、開業から3か月で銀行の残高がかなり減って、資金が底をつくのではと不安でした。これは開業した皆さんが経験される苦労ではないでしょうか。収入と支出のバランスがトントンになった時は、本当に嬉しかったです。現在に至るまで、おかげ様で日医リースに作成を依頼した事業計画通りに推移していますが、開業前ぎりぎりまで勤めていたので、もう少し余裕を持って準備しても良かったかもしれません。
 開業の前後でそれほど暮らしに変化はありませんが、精神的な負担は違います。手術や電話呼び出しの拘束がない替わりに経営や労務の負担があるので、精神的に楽になったというより、精神的負担の質が変わったという感じです。

日医リースがお役に立てたことは何ですか?

 日医リースは最初の相談から開業まで全面的にバックアップしてくれました。医療業界専門なので様々なネットワークを持っており、地場の情報にも通じています、場所の選定や資金調達等開業に至るまでの様々なアドバイスを頂きました。
 また、税理士や設計士、広告等様々なその道のプロの方々をご紹介頂き、その中からそれぞれ業者を選びました。開業前も開業後も良い御付き合いが続いており、信頼のおける方々をご紹介頂きたいへん助かっております。

これから開業を考えている方へのアドバイス

 開業準備について他の方法との比較はできませんが、私の場合は日医リースさんやその他の協力業者さんに手伝っていただいたことで何とか軌道にのっており、とても助かりました。やはり、信頼のおけるパートナーを見つけて開業に臨むのが一番じゃないかなと思います。

Information

とみざわ腎泌尿器科
住所:〒982-0036 宮城県仙台市太白区富沢南1-10-4
WEB:http://tomizawa-urology.com/