開業のきっかけは?
最も大きかったのは子どもの教育ですが、それだけではありません。私は子どものころから英語に興味があり、いつか海外で生活してみたいという思いを持っていました。医師になってからもその気持ちは変わらず、縁あって2009年にシンガポールの診療所で勤務することになりました。
海外生活は当初2〜3年の予定でしたが、結婚し子どもが生まれたこともあり、そのまま現地で約15年間勤務することになりました。ただ、4〜5年前から子どもの日本人としてのアイデンティティ教育も考えるようになり、日本での生活や開業を意識するようになりました。
もう一つの理由は、医師としてのキャリアの最後は自分のスタイルのクリニックを作ってみたいという思いです。シンガポールでは現地のフルライセンスがないと開業が難しい制度があります。そのため、自分の理想とする診療スタイルを実現するには、日本で開業するのが現実的でした。いわば「鶏口となるも牛後となるなかれ」という気持ちで、自分のクリニックを形にしてみたいと思ったのです。
開業に向けて具体的に動き始めたのは2023年からで、学会などで帰国するたびに開業物件の見学をしていました。物件を紹介してくれた企業の方がさまざまな業者さんにつないでくださり、日医リースさんもその一つでした。
最終的には子どもの受験などのタイミングも考え、2024年7月に帰国。知り合いの診療所でアルバイトをしながら本格的な開業準備を進めました。都内の人気皮膚科クリニックでもアルバイトをしながら、診療所運営について学ぶ機会を得ました。
現在地を選ばれた理由は何ですか?
当初は、居住している自由が丘エリアを中心に住宅地での開業を考えていました。ただ、物件をいろいろ見ていくうちに、自分の強みである英語での診療を活かしたいという思いが強くなってきました。英語で診療ができ、外国人の患者さんにも来てもらいやすい場所はどこかと考えたとき、「やはり渋谷ではないか」と思うようになりました。
確かに渋谷はクリニックの競合が多いエリアですが、実際に調べてみると、皮膚科診療について英語でしっかり情報発信しているクリニックは意外と多くありません。また、渋谷駅周辺には複数の医師で診療している大手の皮膚科クリニックはあるものの、皮膚科専門医の女性医師が個人で診療しているクリニックはほとんどありませんでした。
現在の場所は東京メトロ渋谷駅から徒歩1分、JR渋谷駅から徒歩5分という好立地です。さらに以前も皮膚科クリニックとして使われていた居抜き物件で、診療やバックヤードの動線も使いやすく、内装もほとんど手を入れる必要がありませんでした。実際に見たときに「ここしかない」と感じ、この場所での開業を決めました。
診療スタイルは?
私が大切にしているのは、限られた時間の中でも「しっかり診る」ということです。
シンガポールでは日本のような保険診療の制約がなく、病気の診療でも基本的には自由診療でした。そのため予約制で時間を確保しながら診察するスタイルが一般的で、問診を丁寧に行い、生活習慣や予防についてじっくりと説明することができました。
日本では保険診療の枠組みの中で同じスタイルをそのまま実現することは難しい面もあります。ただ、美容医療や外国人患者さんの自費診療なども取り入れることでクリニックとしての収益を安定させ、その分、保険診療でも余裕を持って患者さんを診ることができる体制を作るのが理想だと考えています。
もう一つの特徴は英語での診療です。外国人の患者さんの中には「英語で診てもらえる医療機関を探すのが大変だった」と話される方も少なくありません。東京であっても英語診療を断られてしまうケースはまだ多いのが現実です。
当院では英語での診察にも対応し、処方も院内で行うことで、できるだけワンストップで医療を受けられる環境を整えています。言葉の不安を感じることなく、安心して医療を受けられる場所を提供していきたいと考えています。

設備のこだわりは?
今回の物件は以前も皮膚科クリニックとして使われていた居抜き物件だったため、内装にはほとんど手を入れる必要がありませんでした。その分、内装費を抑えた費用を医療機器の充実に回すことができました。
特に美容医療を含めた機器の導入には力を入れており、最も高額だったのはVビームです。皮膚科のクリニックとして、病気の診療だけでなく美容に関する相談も多く寄せられます。保険診療と美容医療の両面で、患者さんのさまざまな要望にできるだけ応えられる環境を整えたいと考え、機器を揃えました。

開業準備の際に一番苦労したことは?
最も時間がかかったのは物件契約の締結です。条件の見直しや医療機器の価格設定など、細かい点まで一つひとつ確認しながら進める必要があり、想像以上に時間がかかりました。
弁護士の先生方や開業支援を担当してくださった方のサポートを受けながら交渉を進めましたが、最初の交渉から契約締結まで最終的には約8カ月かかりました。それでも丁寧に条件を確認できたことで、納得した形で契約することができたと思っています。
スタッフについては、人材紹介会社を通じて受付1名、看護師1名の素晴らしい人材に出会うことができました。加えて知り合いにも協力してもらい、開業時はフルタイムの受付スタッフ2名と看護師1名、パート受付1名、アルバイト看護師2名という体制でスタートしました。
一方で、もう少し早く取り組んでおけばよかったと感じているのがホームページやSNSの準備です。特に外国人患者さん向けの英語ページは重要だと考えていましたが、開業準備が立て込んでしまい完成は開業後になりました。Instagramについても、業者に依頼するなどしてもう少し計画的に準備しておけばよかったと感じています。
日医リースがお役に立てたことは何ですか?
開業場所の選定から事業計画、資金調達、医療機器の選定まで、開業準備のさまざまな面でサポートしていただきました。特に物件の条件交渉は難しい部分もありましたが、辛抱強く対応していただいたことはとても心強かったです。
また、経験豊富で人脈のある担当の方に開業支援をしていただいたことで、さまざまな課題や問題に直面しながらも一つひとつ乗り越えることができました。現在の場所で開業できたのは日医リースさんのサポートがあったからこそだと感じています。本当に感謝しています。
これから開業を考えている方へのアドバイスをお願いします
当たり前のことかもしれませんが、まずは「自分はどんなクリニックを作りたいのか」というスタイルをイメージすることが大切だと思います。そして、その理想をどうすれば現実の形にできるのかを一つひとつ考えていくことではないでしょうか。夢と現実の間にはギャップもありますが、それをどう近づけていくかを模索していくことが開業の過程だと思います。
私自身は、むやみに規模を大きくするのではなく、自分の目が届く範囲で診療を行い、できるだけ多くの患者さんと直接向き合えるクリニックでありたいと考えています。クリニックを大きくすることよりも、診療の質を保ちながら患者さん一人ひとりにしっかり関わる医療を続けていきたいと思っています。

- Information
渋谷リリー皮膚科クリニック
住所:〒150-0043 東京都渋谷区 道玄坂2-29-19
WEB:https://lilydermclinic.jp/



