開業のきっかけは?

 私は開業前の17年間、筑波学園病院でリウマチ科部長として約2000人のリウマチ患者さんの治療に取り組んでおりました。ただ、リウマチは一生のつき合いにもなるような疾患のため、2000人のうち6割以上の患者さんが、私が病院の定年退職を迎えたあとも治療の継続が必要でした。
 その方々の多くが、私に最後まで診てほしいと希望されていたこと、そして、何より私自身も、医師として生涯現役でリウマチ患者さんたちを診続けたいと考えていたので、自分の体力が続く限りずっと治療を続けられる場所をつくろうと、開業を決意したのです。

現在地を選ばれた理由は何ですか?

 先ほどの開業の経緯があったので、以前からの患者さんが引き続き通いやすいように、つくば市内の病院とも交通の便が大きく変わらない場所が前提でした。さらに、私が提供したかった医療を実践できる体制を整備するためには、一般的な診療所よりも広いスペースが必要でした。こうした条件を満たす土地は簡単には見つからず、いろいろな人の伝手を頼って探しましたが、開業地探しは半年近く難航しました。
 そんななか、開業支援に携わってもらっていた医薬品卸の方から紹介してもらったのが、現在の場所です。前の病院から5~10分ほどしか変わらない大通り沿いの立地のうえ、近隣に内科診療所が2軒あったため、当院が加わって一帯が〝クリニック通り〟のような形になると非常に良いのではないかと思い、ここに決めました。

尾登先生が目指す医療とは、どのようなものですか?

 私が当院で実践しているのは、「リウマチのトータル治療」です。なぜ「トータルケア」ではなく「トータル治療」と銘打っているのかというと、私はケア(Care)が看護師が担う領域、キュア(Cure)は医師の領域と考えていて、当院ではその両方に重点を置いたうえでリハビリテーションも加えた総合的なリウマチ治療を目指しているからです。

 当院のロゴは筑波山をモチーフにしているのですが、実はこれも、片方の女体山がケア、もう片方の男体山がキュア、両方のふもとがリハビリというイメージも重ねています。

診療体制や設備でこだわった点はありますか?

 点滴や生物学的製剤といった内科的なリウマチ治療はもちろんのこと、リウマチ以外の要因による腰痛などの疾患に対する関節注射やリハビリといった整形外科的アプローチもトータルでしっかりカバーしています。というのも、リウマチだけがよくなっても、他の疾患で生活に支障があっては、治療の意味がないからです。
 特にリハビリは、患者さん自身に痛みが再発しない動き方を知ってもらうための運動療法や、やりたいことをまたできるようになるための動作訓練や、自助具の工夫といった作業療法に注力しています。やりたい作業に没頭するうちに痛みが和らいで生活も楽になり、人生が充実していく。そんなリハビリが提供できるように、広いリハビリスペースを設け、レントゲン装置、骨密度測定装置なども導入しています。
 そして、もう一つ大切なのが、心のケアです。当院ではリウマチ患者さんのほかにも、似た疾患である線維筋痛症で受診された方の心理療法を行うためのカウンセリング室があります。
 一方、働くスタッフも私の目指すリウマチ治療の方針や、リウマチ治療自体への知識・経験がある人材が必要でした。勤務医時代の知り合いを中心に、看護師、理学療法士、作業療法士、薬剤師など、さまざまなコメディカルを採用しています。また、学会参加や資格取得といった教育面については、費用補助や資格手当など全面的に支援する体制に整えています。

最も高額な設備は何ですか?

 電子カルテです。先輩開業医の使用している製品を見学したり、複数のメーカーのデモを私のほか看護師などにも体験してもらったりと使い勝手を試したうえで、最終的にコンペで決めました。

開業初日の患者数はどのくらいでしたか?

 ちょうど開業日が当初午前診療のみとしていた木曜日だったこと、また、初日時点で以前からの患者さんが予約されていたので、大体50人くらい受診されました。

日医リースがお役に立てたことは何ですか?

 開業当初から、レントゲンをはじめ骨密度測定装置、関節エコーの機材など、やりたい医療のための多様な医療機器の導入においてお世話になりました。医療機器リースをうまく活用して初期投資を抑えつつ、必要な院内設備を揃えることができました。

最後に、今後の展望は?

 新型コロナウイルス感染症の流行以前は、季節行事や歌やダンスなどの娯楽を組み合わせた作業訓練や、キャンプや登山といった野外イベントも多数開催していました。収束したらまた再開したいですし、より大々的なイベントも企画したいです。また、現在も院内で患者さんの作品を展示するアートギャラリーを設けるなど、状況を鑑みながらもさまざまな企画を模索しています。これからも、リウマチ患者さんがやりたいことを全うできる活動の発信基地になれればと思います。

Information

おのぼりクリニック
〒305-0834 つくば市手代木1927-1

WEB:https://onobori.clinic/