Q:平成29年1月1日から改正育児・介護休業法が施行されたと聞きました。
実務的な対応方法を教えて下さい。具体的に何が変わりどの様に対応する必要があるのでしょうか。

A:

今回の改正では、主に家族を介護しながら働く職員の権利が大幅に拡大されました。改正内容と特に留意すべき事柄は次のとおりです。

改正内容改正前(~平成28年12月31日)改正後(平成29年1月1日~)
(1) 子の看護休暇(年5日)の柔軟化 1日単位での取得 半日単位での取得が可能に
(2) 有期労働契約者の育児休業の取得要件の緩和 以下の要件を満たす場合
① 申し出時点で過去1年以上継続して雇用されていること。
② 子が1歳になった後も雇用継続の見込みがあること。
③ 子が2歳になるまでの間に雇用契約が更新されないことが明らかであること。
以下の要件に緩和
① 申出時点で過去1年以上継続し雇用されていること
② 子が1歳6か月になるまでの間に雇用契約がなくなることが明らかでないこと
(3) 育児休業等の対象となる子の範囲の拡大 法律上の親子関係がある実子・養子 特別養子縁組の監護期間中の子、養子縁組里親に委託されている子等も新たに追加
(4) マタハラ・パタハラなどの防止措置の新設 事業主による妊娠・出産・育児休業等を理由とする不利益取り扱いの禁止 左記に加え、上司・同僚からの妊娠・出産・育児休業等を理由とする嫌がらせを防止する措置を講じることを、事業主に新たに義務付け。
(5) 介護休業(93日)の分割取得 介護を必要とする対象家族1人につき、原則1回に限り取得可能 対象家族1人につき通算93日まで、3回を上限として、介護休業の分割取得が可能に
(6) 介護休暇(年5日)の取得単位の柔軟化 1日単位での取得 半日(所定労働時間の2分の1)単位での取得が可能に
(7) 介護のための所定労働時間の短縮措置 介護休業と通算して93日の範囲内で取得可能 介護休業とは別に、利用開始から以下の内いずれかの措置を、3年の間で2回以上利用可能に
Ⅰ 所定労働時間の短縮措置(短時間勤務)
Ⅱ フレックスタイム制度
Ⅲ 始業・終業時刻の繰上げ・繰下げ
Ⅳ 労働者が利用する介護サービス費用の助成その他これに準じる制度
(8) 介護のための所定外労働の制限 介護のための所定外労働の制限(残業の免除)について、対象家族1人につき、介護終了まで利用できる所定外労働の制限を新設(介護の必要がなくなるまで残業の免除が受けられるようになる)

(1)・(6) 子の看護休暇・介護休暇の取得単位の柔軟化

 子の看護休暇、介護休暇を半日単位で取得させなければいけません。半日勤務させ、年次有給休暇の半日単位を認めるなど、有給休暇の消化率の向上を図ることも可能です。この改正を受け、時間単位の介護休暇を導入する診療所もあります。なお、休暇を取得させた分の賃金は支払う必要はありません。

(4) マタハラ・パタハラなどの防止措置の新設

 事業主(院長)のみならず、上司や同僚からの妊娠・出産・育児休業等を理由とする嫌がらせを防止する措置を講じることが義務付けられました。就業規則の服務規律などにルールを明記する必要があります。

(5) 介護休業の分割取得

 従来の法律では原則、介護休業を取得させ、その期間が93日を経過する前に復職した職員には、再度介護休業を取得させる必要はありませんでした。(対象家族の介護状態によっては分割取得を可能とさせる必要があった。)しかし今後は、93日を上限に3回まで分割取得させる必要があります。介護休業を中断して復職したり、介護休業を再開したりする職員が増えるため、院内で中断・再開を何日前までに申し出なければいけないか決める必要があります。それぞれ1カ月前後の期間を設けておけば職員の過不足にある程度対応できるでしょう。また、介護休業期間中は賃金を支払う義務はありません。

(8) 介護のための所定外労働の制限

 今回から新設された権利です。家族を介護しながら就業する職員が希望する場合、いわゆる残業を免除させる必要があります。この権利は介護終了まで続きます。月初などの繁忙期に対応するためには、変形労働時間制などの活用を検討する必要があります。
 昨今、職員の権利意識が強くなりつつあります。法改正へ対応することにより、診療所にとっても職員にとっても、働きやすい環境をつくる必要があります。

 今回ご紹介した法改正に違反した場合、対応の仕方によっては、診療所名を公表される可能性もあります。改正内容を確認すると同時にルールを遵守する体制も整えていきましょう。