綺麗だからといって安心・快適ではない?!

 開院時こだわりをもってデザインした院内。しっかり企画し綺麗にしつらえたにもかかわらず、いざ開院してみたら何となくしっくりこない。そんな経験はありませんか。しっくりこない原因、それは来院する患者さんの状況に合わせた室内環境になっていないからかもしれません。

 医療機関の院内環境は患者さんに分かりやすく、かつ安心できるものでなければなりません。同時に、働く職員たちにとっても快適なものである必要があります。

現状の患者さんに合った院内環境であるか

 神奈川県にあるT内科クリニックでは、思い切って患者さんが多く集う待合室のデザインを見直してみることにしました。しかし、今からインテリアの入れ替えや内装をやり直すなどという大がかりなものは到底できないので、どうしたらよいか看護師や事務員などと話し合うことにしました。すると、「トイレなどの場所が分からない」や「掲示物がよく読めない」などと言った声が多く寄せられていることが分りました。

 開院当初は子ども連れの患者さんが多く来院すると見込んでいたTクリニック。確かに開院当初はこうした方々が多く訪れ、院内はにぎわっていました。

 しかし、ここ数年は高齢者の方が来院数を上回る状況が続いていることから、こうした院内環境が今の患者さんには適していないのではという結論に至ったといいます。

サインや色合いなど改善しやすい部分から

 T内科クリニックでは、意見の多かった場所を示すサインについて見直してみることにしました。これまでは場所をイメージするイラストを大きく出し、その下に名称を記載していましたが、より分かりやすいイラストを用いるとともに、名称を大きくはっきりと示すことにしました。(図1)

 また、掲示物の内容もできるだけ文字を減らすとともに、明暗をはっきりとさせ、区別しやすい書体を用いるなどして、より分かりやすくなるよう工夫しました。(図2)

 その他、待合室全体の空間については、もともとパステル調の明るく、子どもから高齢者の方にまで好まれる色ではありましたが、照明についてはあまり重要視していなかったことから、専門家に空間全体の照明と間接照明の明るさやバランスをチェックしてもらい、高齢者の方が必要とする明るさを確保するとともに、診察室や廊下、トイレ等も、それぞれの役割に合わせて必要な明るさを保てるよう改善しました。

患者さんの安心や安全を守るために

 院内環境の見直しに向けては、①患者さんがゆっくりと安心した気持ちで過ごすことができるか、②事故などの危険を未然に回避し、安全な環境を保てるか、③必要な情報を正しく得ることができるか、この3つの視点を意識して取り組むことが重要です。

 今後、高齢者はもとより幅広い患者層の獲得に向け、皆さんも一度、自院の環境の点検をしてみてはいかがでしょうか。