最近の保険の動向

 今号から4回シリーズで、クリニック経営に必要な保険について、その動向や見直しに向けたポイント等をご紹介していきます。

 開業当初は資金が必ずしも潤沢ではないので、できるだけランニングコストはかけたくないところです。また、経営が軌道に乗るまでは、さまざまな部分で費用がかさみます。保険に関しては、商品の種類が多い上に複雑で、どのような内容が自院に適しているか十分に判断できないままに、必要最低限の保険を選んだという方も少なくないのではないでしょうか。

 しかし、数年が経過すると、開業当初には予想もしなかったさまざまな問題が生じてくるもので、保険でカバーできず別途費用を強いられたというお話をよく聞きます。今回は、クリニックが開業当初に加入する基本的な保険の、最近の動向についてご紹介します。

①損害保険(火災保険)

 テナントで開業しているクリニックの場合、建物の火災や落雷、水漏れ等による損害などの一般的な対象に加え、「借家人賠償責任保障」等の特約を付加し、オーナーに対する原状回復義務に応えられるようにしているところも増えてきています。また、昨今の気象状況を鑑み、台風や暴風、豪雨、融雪などによる洪水に対応する「火災危険保障特約」や、地震や噴火による火災等に対応する「地震・噴火危険保障特約」にも関心が高まっています。

 自動車の運転技術の進展やAI・ロボットの導入、ビックデータの解析活用などのリスクに対しても、近い将来、保険を見直しながら備えていく必要があります。

②医師賠償責任保険

 最高裁判所が公表している医事関係訴訟事件の処理状況は、ここ数年来はほぼ同件数で推移しています(図表)。最近では、訴えを起こした患者側が賠償金を確実に得るため、開業者だけでなく勤務医や看護師等も共同被告として訴えるケースが増えています。また、賠償額も高くなることが多くなっています。

 医療事故調査制度の導入等により、今後ますます医療事故への意識や関心が高まってくるものと思われます。さまざまな状況に可能な限り対応できる保険について検討していく必要があります。

③所得補償保険

 万が一の病気やケガの治療にかかる費用のほか、病気やケガなどで就業することができなくなった場合に、復帰するまでの期間中の収入補償や復帰後の減収を補てんができる保険に関心が高まっています。

 また、休業中の診療を継続するために雇い入れる代診医師の費用やクリニックで働く勤務医、看護師等が倒れてしまった時の給料を補償するなど、従業員の福利厚生の視点から保険の見直しを進めているクリニックも増えてきています。

④生命保険

 開業医になることにより、個人で対応しなければならないリスクが増えてくることから、自分自身に何かあった際に、設備資金の返済や家族に向けた保障、また、勇退後の老後資金の一つとして生命保険への加入を検討する方が増えています。

 また、2015年1月から相続税の基礎控除額が引き下げられたことへの対策として、保険の見直しを考えている方も少なくないようです。

現状や将来を見据えた見直しを

 クリニック経営においては、本来の診療に加え、経営の継続や借入金の返済、万が一の時の対応など、常に不安がつきまとうものです。リスクを少しでも軽減するとともに、現在のクリニックの現状や自分自身、家族のライフプランに合せ、定期的に保険を見直していくことが大切です。

 次回からは、それぞれの保険の特徴や見直す際のポイントをご紹介していきます。