Q:結婚や就労などで日本で生活する外国人や外国からの観光客の増加を受け、クリニック等でも外国人患者を受け入れるケースが多くなっています。どのように対応すればよいのでしょうか?

A:

 日本の在留外国人は約247万人(2017年6月末)、訪日外国人旅行者は年間2,869万人(2017年)に達し、今後も2020年の東京オリンピック・パラリンピックを控え増加傾向にあります。このような背景から、外国人が日本国内で医療を受ける機会も増加すると予想され、外国人患者が安心・安全に日本の医療サービスを受けられるよう、外国人患者受け入れのための体制整備が急務となっています。

 厚生労働省が2016年10-12月に実施した「医療機関における外国人旅行者及び在留外国人受け入れ体制等の実態調査」では、3,761医療機関中1,710回答の中で、医療機関における外国人患者の受け入れ実績は外来で79.7%、入院で58.5%であり、65.3%の医療機関が日本語でのコミュニケーションが難しい外国人患者の受け入れを行っていたことが明らかになりました。

 また、外国人患者対応について、84.5%の医療機関は「言語や意思疎通の問題」があると回答し、63.9%が「未収金や訴訟等のリスク」、61.7%が「対応に要する時間や労力の増加」と回答し、実際に外国人患者とのトラブルは、「金銭・医療費に関するトラブル」が29.8%、「言語的コミュニケーション上のトラブル」は26.5%の医療機関が経験していたことが明らかになりました。

 これらのことから、医療機関における課題としては主に「多言語対応」「医療費未収対策」の2点が浮き彫りとなりました。

 今後の外国人患者受け入れに向けた多言語対応については、いつどのタイミングで受診があるかわからない外国人患者に対し、医療通訳者を常駐させることはコスト面でなかなか難しいこともあり、近年では利便性の高い「電話やタブレットでの医療通訳サービス」を導入する医療機関が増えています。医療通訳サービスは「必要時にすぐに利用できる」「対応言語が幅広い」という利点があり、現場の医師や看護師が安心して診療を行えるだけでなく、対応にかかる労力の軽減にもつながることが期待されています。

 また、海外では治療前に医療内容やコストを明示し患者が納得した上で医療費を前払いし診療を受ける国があります。このような日本の医療制度との違いによるトラブルから医療費が回収できないケースが多く発生しています。そのため、外国人患者自身がどこまでの医療を求めているかを確認し、日本の医療制度の概要や診療の流れについて十分な説明を行った後、診察や検査につなげることが有効な医療費未収対策手段となります。更に、診療を開始する前に日本の公的医療保険や旅行保険への加入の有無、クレジットカードや所持金、パスポートを含め帰国後の連絡先等を十分に確認しておくことも重要です。

 外国人患者が来院した際に、現場の対応がスムーズになるよう、今から少しずつでも受け入れ体制を盤石にできるよう、取り組みを進めてみてはいかがでしょうか。