はじめに

 診療の在り方が大きく変わろうとしています。2018年の診療報酬改定ではオンライン診療に関する評価が新設されました。情報通信機器を用いた診療は、医師の不足する地域において有用となるだけでなく、医師の勤務環境向上や患者の通院負担の改善など、医師・患者双方にメリットが見込まれます。反面、診療の安全性や有効性をどのように確保していくかが課題となっています。厚生労働省では2018年3月に「オンライン診療の適切な実施に関する指針(案)」を公表し、オンライン診療の実施にあたっての具体的留意事項を取りまとめました。本号では、今改定で新設されたオンライン診療に関する加算の内容を確認するとともに、同指針の内容について解説していきます。

オンライン診療料・オンライン医学管理料の新設

 情報通信機器を活用した診療について、対面診療を原則とし一定の要件を満たすことを前提に「オンライン診療料」・「オンライン医学管理料」がそれぞれ新設されました。詳細は以下のとおりです。

 

●オンライン診療科 70点(1月につき)

【算定要件】

  1. リアルタイムでコミュニケーションが可能な情報通信機器を用いて診療を行った場合に算定。

  2. 連続する3月は算定できない。

  3. 対面診療と組み合わせた療養計画を作成しそれに基づく診察を行う。

  4. 当該保険医療機関に設置された機器を用いること。

【施設基準】

  1. 厚労省が定める「指針等」に沿って診療を行う体制を有すること。

  2. 緊急時には概ね30分以内に当該医療機関で診察可能な体制を有していること。

  3. 一月あたりの再診料等及びオンライン診療の算定回数に占めるオンライン診療料の割合が1割以下であること。

【算定可能な患者】

特定疾患療養管理料、地域包括診療料、小児科療養指導料、認知症地域包括診療料、てんかん指導料、生活習慣病管理料、難病外来指導管理料、在宅時医学総合管理料、糖尿病透析予防指導管理料、精神科在宅患者支援管理料、を算定している初診以外の患者で、かつ、当該管理に係る初診から6月以上を経過した患者。

 

●オンライン医学管理科 100点(1月につき)

【算定要件】

  1. リアルタイムでコミュニケーションが可能な情報通信機器を用いて診療を行った場合に前回対面受診月の翌月から今回対面受診月の前月までの期間が2月以内の場合に限り、所定の管理料に合わせて算定。

  2. 対面診療で管理料を算定する月においては算定できない。

  3. 対面診療(間隔は3月以内)と組み合わせた診療計画を作成しそれに基づく診察を行う。

【施設基準】

  1. オンライン診療料の施設基準を満たしていること。

【算定可能な患者】

特定疾患療養管理料、地域包括診療料、小児科療養指導料、認知症地域包括診療料、てんかん指導料、生活習慣病管理料、難病外来指導管理料、糖尿病透析予防指導管理料、を算定している初診以外の患者で、かつ、当該管理に係る初診から6月以上を経過した患者。

遠隔モニタリング加算

 在宅酸素療法指導管理料及び在宅持続陽圧呼吸療法指導管理料について、情報通信機器等を併用した指導管理を評価する遠隔モニタリング加算が新設されました。詳細は以下のとおりです。

 

●在宅酸素療法指導管理料 遠隔モニタリング加算  150点(1月につき)

●在宅持続陽圧呼吸療法指導管理料 遠隔モニタリング加算  150点(1月につき)

【算定要件】

  1. 前回受診月の翌月から今回受診月の前月までの期間、遠隔モニタリングを用いて必要な指導を受けた場合、2月を限度に加算。

  2. 対面診療と組み合わせた療養計画を作成しそれに基づく診察を行い、その内容を診療録に添付。

  3. 対面診療の間に、適切な指導・管理を行い、状況に応じて適宜患者に来院等を促す等の対応。

  4. 少なくとも月1回はモニタリングにより得られた臨床所見等を診療録に記載。

【施設基準】

  1. 厚労省が定める「指針等」に沿って診療を行う体制を有すること。

  2. 緊急時には概ね30分以内の当該医療機関で診察可能な体制を有していること。

オンライン診療の適切な実施に関する指針(案)

 既述した加算の算定に際しては、厚労省が定めた「オンライン診療の適切な実施に関する指針(案)」の内容に沿ってオンライン診療を実施していく必要があります。実施にあたっては、1.医師と患者間の守秘義務、2.診療行為における医師の責任、3.診療の有効性の評価の定期的な実施、4.オンライン診療の限界を理解した上での不利益に関する事前説明、5.エビデンスに基づく医療の提供、6.患者の求めに基づく提供、を基本理念とし、その具体的な内容について「最低限遵守する事項」及び「推奨される事項」等をその考え方とともに示しています(図1)。本指針は今後のオンライン診療の普及、技術革新等の状況を踏まえて定期的に内容を見直すこととされていますので、都度チェックしていく必要があります。

今後の方向性を意識しましょう

 今回ご紹介したオンライン診療以外にも、ICTの活用や医師の働き方改革に関する事項は今後の重要なポイントとなります。このような方向性を意識し、自院の経営の在り方について考えていただければと思います。