通所リハビリテーションと通所介護の違い

 介護保険の通所サービスの代表格は、主に株式会社等が実施している通所介護(通称デイサービス)と医療機関が実施している通所リハビリテーション(通称デイケア)となります。介護保険法上(第八条)では、通所リハビリテーションは、「心身の機能の維持回復を図り、日常生活の自立を助けるために行われる理学療法、作業療法その他必要なリハビリテーション」をいい、通所介護は、「入浴、排せつ、食事等の介護、その他の日常生活上の世話であって厚生労働省令で定めるもの及び機能訓練を行うこと」と定義されています。しかし、サービスの実態は違いが分かりにくい状態にあります。

介護報酬改定の動向

 平成27年度の介護報酬改定では、定員18人以下の通所介護は、市町村が主体となって提供する地域密着型サービスに移行したり、軽度者に対する大幅な介護報酬の削減が実施されました。また、中重度ケア体制加算や認知症加算など重度受入の方針が明確に示されました。介護報酬改定の都度、通所介護はマイナス改定が行われています。

 通所リハビリテーションは、計画的なリハビリの評価が高まり、患者と医師との面談やカンファレンスなどの医師の関与や多職種連携の必要性が求められる、リハビリテーションマネジメント加算が創設されました。生活機能に着目した活動に参加するリハビリテーションの重要性が示されるとともに、社会参加支援加算などが象徴するように、通所介護や訪問リハビリテーションにサービスを移行する“卒業”の概念が示されました。また、診療報酬の改定では、維持期のリハビリテーションの単価が大幅に削減され、同一設備で時間帯による使い分けや空きスペースによる介護保険の利用を促す方向性が示されています。

市場の変化

 今年9月までの老人福祉・介護事業の倒産件数は、前年度の年間件数を既に超えたという報道がなされ、利用者の確保が経営上の課題となってきました。通所介護の事業所数全体は、前年度の102.1%(地域密着型を含む)であり、倒産以上に新たな事業所が増加しています。要支援を中心とした大幅なマイナス改定にもかかわらず新たな加算を取得したり、利用者を開拓することで、1事業所当たりの単位数は、前年度とほぼ変わらない状況にあり、未だ通所介護の市場規模は拡大している状況にあります。

 一方、通所リハビリテーションの事業所数は、ほぼ通所介護と同様の伸び率(101.9%)で、利用回数の伸び率は、前年と比較し通所介護(小規模事業所除く)で110.5%に対して通所リハビリテーションは97.5%(介護給付費実態調査月報8月審査分)となっています。利用回数の伸び率の違いの主な要因は、営業力の違いと考えられます。

経営上の留意点

 通所リハビリテーションの場合、医師の指示書が必要となるなど、利用するまでにいくつかの手続きを踏む必要があります。そのため通所リハビリテーションは、通所介護とサービスの違いが分かりにくいこともあり、ケアマネジャーの選択肢に入らない場合が多く見受けられます。高齢者のリハビリニーズは高く、必要な手続きについて理解を得ることができれば、稼働が上がる傾向にあります。

 介護事業の営業の対象は、ケアマネジャーとなります。地域のケアマネジャーに顔を覚えてもらい、親近感を持ってもらうことが効果を上げるポイントとなります。ケアマネジャーに分りやすい言葉を用いて実績報告するなども効果的な営業方法の一つと言えます。まずは訪問日を予め定め、毎月ケアマネジャーに手渡しで実績報告を行い顔の見える関係性を構築していきましょう。