増加するクリニックの閉院

 近年、クリニックの閉院数は増加傾向にあり、全国的な閉院数はここ数年、過去最高を更新し続けています。

 クリニックの開設数から閉院数(廃止・休止数)を除いた純増(減)数は、2008年度に初めて純減しました。その後、年度によって増減を繰り返し直近の2017年度調査では、58施設の純減となっています(図表1)。

 本連載で触れている通り、近年親族間承継を望まない医師も増えており、医療需要があるにも関わらず閉院を余儀なくされるケースも少なくありません。

 本稿では、クリニックを閉院するための手続きをご説明します。

医療法人・個人別閉院手続き

 事業承継に係る手続きなどが医療法人・個人別で異なると同時に、閉院手続きについても、医療法人と個人によって異なります。

個人診療所の場合は、関係書類をそれぞれの機関に届け出ることで完了します(図表2)。

(図表2)主要な届出(抜粋)

 保健所  

 診療所廃止届(廃止後10日以内)

 エックス線廃止届(10日以内) 

 地方厚生局 

  保健医療機関廃止届(遅滞なく)

 都道府県

  麻薬施用者業務廃止届(15日以内)

 福祉事務所

  生活保護法指定医療機関廃止届(遅滞なく)

 税務署

  個人事業廃止届(遅滞なく)

 年金事務所

 適用事業所全喪届

 被保険者資格喪失届(いずれも5日以内) 

 労働基準監督署

 確定保険料申告書(50日以内) 

 

 医療法人の場合は、上記手続きに“加え”(一部、差異有り)、医療法人の解散手続きを行う必要があります。医療法人の解散には、医療法第55条に定める解散事由(定款に定めた解散事由の発生、社員総会の決議)のいずれかに該当する必要があり、この解散の認可には、都道府県の医療審議会において、都道府県の認可を受けなければなりません。

 認可を受けた後は、解散の登記、清算手続き、清算結了の登記等多数の手続き、届け出が求められます。

 関係機関への届け出は期日もあることから、自身で完結しようとせず、税理士や社会保険労務士などの専門家へ依頼して、スムーズな閉院手続きを行う必要があります。

 その他、開業医として地域医師会等団体に所属していた場合は、退会手続きや雇用していた職員の退職手続き・再就職先の斡旋等、膨大な量のタスクが待っています。

 特に注意が必要なのが、既存患者への対応です。長年経営している診療所には、院長先生のファンともいえる既存患者が多数いらっしゃることでしょう。また、診療科によっては他の診療所を探しづらい場合もあります。医師会などの繋がりを活用して、患者一人ひとりに対し、丁寧な対応をしていくよう努めましょう。これは患者のみならず、職員も同様です。近年、医療従事者の価値観も多様化しており、同じ有資格者であったとしても急性期から回復期、慢性期、在宅あるいは介護施設と希望する勤務先は様々です。年代によっても夜勤・土日出勤の可否など希望する勤務形態は異なるため、一人ひとりの希望を聞いたうえで、連携病院・介護施設等へ紹介するなどの配慮が求められます。