採用戦略の前提

 「採用にはブランディングとマーケティングが欠かせない。」と院長のための採用戦略の基礎知識<第1回>で触れました。採用を戦略的に行なうためには、もう1つ大切なことがあります。それは、“法人経営に資する”ということです。労働集約型であり、人が資本の業界にあって採用は経営に直結する重要課題です。

 経営状況や環境、例えば規模、周囲の競合の数などによっても、立てるべき採用戦略は異なってきます。院の経営戦略や組織体制、人事の方針、評価・報酬、風土などから今一度、自院を客観的に見つめ直し、“何のために採用するのか”を考える視点(目的の明確化)が肝要です。

採用は人材マネジメントの1つ

 採用は、単に“人を採る”だけの活動ではありません。採用した後の配置、教育、報酬、評価が密接に関係してきます。本来、採用活動は人材マネジメントシステム(Human Resource Management:HRM)の一環です。よって、採用を計画することはマネジメント全体を考えること、捉えなおすことと言うことができます。

 目的が明確化されたのち、具体的な計画を立てていきます。できれば、院長一人で考えるのではなく、同僚となるスタッフに、“どのような人を採用したら良いのか”、“働いていて良いと感じるところ”などを、聞いてみることをお勧めします。思いもしなかった、参考となる意見を聞けるケースがよくあります。採用活動を、できる限り多くのスタッフを巻き込んで行うことは、採用後の戦力化や定着に繋がります。

採用を設計する

 上記の手続きを適切、かつ十分に行っていれば、採用ターゲットが絞られ、“基本的な設計”ができている状態と言えます。「採用がうまくいかない」というケースをよく耳にしますが、外部環境の変化もさることながら、実際には、この基本設計ができていないことがほとんどと言っても過言ではありません。

 基本設計から詳細設計の主要な流れは下記の通りとなります。基本設計から詳細設計の主要な流れは下記の通りとなります。

 

 

採用の設計          

 

 

内容

 

 

 1.採用目標

 

過去の採用を振り返り、採用マーケティングを行った後、採用時期(いつまでに)、どのような人材(人材要件:知識・技術、年齢、人柄等)を、何名、採用するかを目標として掲げ、スタッフと共有する。

 

 2.予算

 

目標の達成に必要な予算額、提示できる雇用条件(雇用形態・給与・福利厚生等)を決定する。

 

 3.スケジュール

 

採用にかけられる時間を考慮しながら、具体的な求人募集、面接といった採用までの各手続きをスケジューリングする。

 

 4.体制構築

 

院長一人ではなく、スタッフにも担当してもらい、採用活動に協力してもらうこと、理解を得ることが重要

 

 5.募集内容

 

採用ターゲット(求職者)に届くような、自院の魅力・良さを伝え、実際に働いているスタッフの声、働き方の紹介や採用後の教育体制を含めた募集内容とする。

 

 表の中で、①過去の採用の良かった点・悪かった点を振り返り、採用目標をスタッフと共有すること、②具体的にイメージした採用ターゲットに届く募集内容とすること、③スタッフを巻き込んだ採用活動とし、求人内容や面接、職場案内などをスタッフに理解を得ながら担ってもらうこと、が特に重要な点です。

 採用が難しい時代において、院として総力を上げて取り組む姿勢が大切です。近い将来に仲間となるスタッフを迎え入れようとする体制・姿勢は、必ず募集内容などに表れ、求職者に届きます。

 採用を再考すると同時に、経営、人事マネジメント体制を捉え直すことが求められています。経営視点に立った採用戦略を立て、“攻め”の採用をしていきましょう。