積極的な意見交換ができていますか

 皆さんの職場では日々どのような会議が行われていますか。決まった人しか発言しない、その意見に反対する人がいない、発言を促しても沈黙、会議のあとに不満が出る、など十分な意見交換ができていない職場は多いのではないでしょうか。会議の目的や内容にもよりますが、なにか新しい企画を検討したり、業務内容を見直すなどといったときには、現場スタッフの意見を参考にすべき場面も多々あると思います。スタッフ間で積極的な意見交換ができていない場合、どのように対応すべきでしょうか。

 都内のある内科クリニックでは、院長先生が上記のような課題を感じており、効果的なミーティングのあり方を日々検討し試行錯誤を繰り返していました。そのような中、院長先生がたまたま参加された外部研修で「ディベート(対立討論方式)」を職場内ミーティングに取り入れる事例を知り、早速導入することにしました。

ディベートとは

 ディベート(対立討論方式)とは、あるテーマについて肯定側と否定側に分かれて、それぞれの意見・主張を討論し合うことを言います。例えば「患者さんの待ち時間を減らすため、インターネットによる予約システムを導入したらどうか」というテーマに対して、導入する際のメリット・デメリットなどを異なる立場で主張します。いわゆる「競技ディベート」では、より説得力のある主張をした側が勝者となりますが、こちらの院では出された意見をもとに、院長先生と事務長が最終判断をすることとしています。より活発に討論が進められるよう、次のルールを設定しています。

  1. 院長・事務長はどちらの側にも入らない

  2. 各人の意思に関係なく肯定側・否定側に分ける

  3. 事前にテーマを周知して意見や情報を準備させる

 先程のテーマで討論したときには、表に抜粋した意見に加え、近隣のクリニックの状況や、あるスタッフの前職場での体験談、導入経費の見積もりなども出されました。議論が白熱するとあっという間に時間が過ぎてしまうこともあり、院長先生は意見の応酬を見守りつつ、タイムキーパーの役割も務めます。

 

ディべートテーマ「インターネットによる予約システムの導入について

肯定側  反対側 

 ・体調の悪い方を長時間院内で待たせなくて済む

・サラリーマンなど平日に時間が限られている方の来院も見込める

・電話予約(電話対応業務)の減少

・予約管理の一元化ができる

・予約者がインターネット上で予約状況の確認ができる

 

・ 高齢者の利用が難しい

・活用できない人の待ち時間が増える

・受付の事務作業が増える

・導入コスト・維持経費がかかる

・予約時間どおりに診療を開始できるとは限らない

・緊急時対応の枠の確保が必要

 (※実際の討論の一部を抜粋)

スタッフに参画意識をもたせる

 こちらの院では、概ね年4回程度、ディベートを行っています。テーマによってはその日のうちに決着せず、何度か“延長戦”も行われました。

 ディベートを取り入れる最大のねらいは、各々の立場(上下関係など)に関係なく積極的に意見を表出させることにあります。これにより、各スタッフが当事者意識をもって会議に臨むことが期待できます。ディベートを取り入れてからは、普段のミーティングのなかでも、以前に比べてスタッフの発言が増えたとのことです。

 また、院長先生は、「普段おとなしくしている若いスタッフがいて、こんなにも物事を理論的・客観的に考えているのかと感心させられた」と新たな発見もあったようです。

 ちなみに、本院では現在もインターネット予約ではなく電話予約制としています。電話での会話を通じて、患者さん個々の情報を適切に把握することを心がけています。

 ミーティングの活性化に向け、是非ご検討いただいてはどうでしょうか。